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木内酒造(那珂市鴻巣)が2月14日、同社敷地内にレストラン「母屋」をオープンした。
入り口では暖炉と美術家・遠山由美さんの作品「飲中八仙歌」が客を出迎える
江戸末期創業という同社は、清酒「菊盛」をはじめ、常陸野ネストビールやジャパニーズウイスキーなどの製造販売を手がける。「食と酒を楽しむ場」として、常陸野ネストビールや生ハムなどを提供する店「常陸野ブルーイング」を東京都内に展開するほか、茨城県内に飲食店「蔵+かつ」を2店舗営業するなど飲食事業も展開している。
新店の「母屋」に使う建物は昭和初期に建てられた町家で、代々当主が暮らした母屋。同社社長の木内敏之さんは「趣ある建具や欄間(らんま)、天井などには手を加えず、元の建築の良さを引き出す形で改装した」と話す。
メニューは、ランチコース=5,500円、ディナーコース=1万円。ペアリング=3,000円~。コース料理は、日本酒造りで培った発酵の技を取り入れた「イノベーティブフレンチ」を用意する。食材は、茨城県産のブランド豚肉や牛肉、野菜、茨城県内の漁港で仕入れた魚介類を使う。木内さんは「醸造発酵技術を使って素材の味を引き出している。各料理にペアリングする酒には、木内酒造の希少な古酒を含む日本酒や未発売の酒を提供する予定」と話す。
「近年はコンテスト入賞を目指す日本酒が多く、全国的に日本酒の味が画一的になってきた」とも。「酒は酒蔵の色がついている方がおいしく楽しい。日本酒の楽しみ方を提案したいという思いがあるので、さまざまな料理と日本酒との相性の良さを感じてもらえたら」と木内さん。
ランチメニューのアミューズ「自家製バカリャウと里芋のコロッケ」「自家製ドライトマトのタルト 自家製真いわしのアンチョビサワークリーム」には、ビール造りで使うホップを日本酒につけ込んだという酒「淡雫HOPS(あわしずくホップ)」を合わせる。メインは「常陸野ポークのわら焼き 朝紫ソース 十年熟成みそ」。「熱燻(ねっくん)」技法でいぶしながら香りをつけ、低温調理で柔らかく仕上げた常陸野ポークを、ペアリングした古代米を使った日本酒「朝紫(あさむらさき)」を煮詰めたソースで味わう。デザートは、土浦レンコンを糖化発酵させバニラの香りをつけた「土浦蓮根アイスと金砂郷産白インゲン豆のブランマンジェ」を用意する。
シェフの白井啓介さんは「郷土料理から着想したメニューが多い。今後も地元農家を訪ねながら、この土地で生まれた酒に合う料理を提供していきたい。オリジナルの発酵調味料の種類が30種類以上あるため、まだまだ作りたい料理がたくさんある」と意欲を見せる。
営業時間は12時と18時からの2部制。完全予約制。火曜、水曜定休。