NPO法人「Make Another Place for Smile(略称MAPS)」(那珂市菅谷)が4月1日、学習塾「CanPass(キャンパス)」と英会話教室「ABC English School」を開設した。
同法人は共に元高校教員の東海林祐太さん、悠里さん夫婦が共同代表を務める。祐太さんは授業や部活動の指導を行う中で、「目の前の子どもたちに向き合い切れていない」と感じていたという。子どもが生まれ、小学校入学を意識した際には夫婦ともフルタイムの教員を続けながら子育てを両立する「小1の壁」にも直面した。悠里さんは不登校や長期欠席の生徒に関わり、登校を促しながらも「学校がすべてだと思っていると、そこが苦しくなったときに転がり落ちるのが早い。学校に行けない自分は駄目なんだと自己肯定感を削いでしまう」と感じていたという。
祐太さんは2021年に退職し、翌2022年に民間学童を開設。悠里さんは2025年3月に11年間の教員生活を終え、同年4月にフリースクール機能を備えた「サドベリースクールedit」を立ち上げた。2024年3月には2つの事業を束ねるMAPSを設立し、現在はスタッフ約10人で学童保育、フリースクール、サッカー教室を運営する。
新たに開設した「CanPass」は学童利用の児童を中心に、それ以外の子どもにも開く。名前には「自分でできる(Can)」「自分で道を切り開く(Pass)」の意味を込めた。小学1年生から高校3年生まで対応するデジタル教材を導入し、学年の枠にとらわれず学べる「無学年式」を採用。前の学年に戻って復習したり、得意な教科は先に進んだりできる。教材はインクルーシブ教育にも対応しており、読み書きに困難を抱える子どもや日本語が母語でない子どもの学習フォローも想定した設計になっているという。
悠里さんは教員時代、学習意欲を失った高校生と向き合う中で、「深掘りすると小学校の頃からの勉強がつまずきの連鎖になり、自己肯定感まで下げてしまっている」と感じていたという。「いつまでにこれをやってとは言わない。何が好きで、どこをフォローしたいのかを聞き出して、一緒に乗り越え方を考える。大人が引っ張るのではなく、子ども自身が走っていける場所にしたい」と話す。
英会話教室は、悠里さんが不登校の保護者支援活動を通じて知り合った英会話講師が担当する。
同法人の特徴はフリースクール事業を利用料無償で運営していること。悠里さんによると、フリースクールは利用料で人件費を賄う形が一般的だが、不登校の子どもがいる家庭は保護者が仕事を休まざるを得ず収入が減る上にフリースクールの利用料も負担する二重の苦しさを抱えるケースが多いという。同法人では利用料を取らず、個人・法人からの寄付を「未来パートナー」として募り、スタッフの人件費に充てる仕組みを取っている。悠里さんは「利用したい人に届かないのでは意味がない。前例がほとんどないモデルだが、持続可能な形を目指して挑戦している」と話す。
フリースクールに通う親子について、悠里さんは「『学校に行けない私たちが駄目なのだ』というところから始まることが多い。1年ほど関わると保護者が状況を話してくれるようになり、その変化が子どもにも伝わって元気を取り戻していく。学校に戻ってもいいし、別の場所で育っていってもいい。どちらを選べるくらい元気になることが私たちの支援だと思っている」と話す。フリースクールは月曜・水曜・金曜の9時~13時に開き、火曜・木曜は地域の人を講師に招いた心理学講座やイベントを行う。
悠里さんは「学校教育と社会教育が両輪になって、子どもたちが学びたいことを学べる社会をつくっていきたい」と先を見据える。