茨城デザインセレクションは、茨城ブランドの育成を目的に、県内の中小企業のデザイン開発意欲を高めるために開催される。昨年は6年目を迎え、これまで、プロダクト、工芸・クラフト、食品、広告、宣伝、インテリア、建築など各分野のデザイン活動に対して、知事選定、審査員奨励選定などを選出。今回の受賞作品を含めこれまでに124点の応募作が知事選定、審査員奨励選定に選ばれている。
今年のセレクションには県内企業(個人を含む)100社から応募があり、グッドデザイン賞審査委員を務める筑波大学大学院の蓮見孝教授ら8人のデザインの専門家が審査を担当。その結果、知事選定25件、審査員奨励25点が選ばれた。
今回の特徴としてプロダクト製品の応募が目立ち、ものづくりにおけるデザインを追求した応募が目を引く。それに加え、ものづくりと販売スタイルや地域起こしなどの活動を含めた応募作が目立った傾向にある。
主な選定作品を見ると、下半身の運動訓練用に開発された装着型ロボットの「ロボットスーツHAL福祉用」(CYBERDYNE、つくば市)はデザイン、アイディアともに高い評価を受けた。
車の中に最高のオーディオを組み込んだカスタムカーの「ダイヤモンドスター エクリプス」(サウンドウェーブ、ひたちなか市)やヤングママを意識した「授乳12態図絵手ぬぐい」(モーハウス、つくば市)など、先端技術と伝統とを上手くデザイン化した応募作が選定されている。
また、市民主体で映画化にこぎ着けた「茨城発の映画『桜田門外ノ変』から始まる地域づくり」(水戸藩開藩四百年記念『桜田門外ノ変』映画化支援の会、水戸市)など地域活性化につながる事例も選定対象となった。
農業や漁業が盛んな茨城らしいデザインも選定され、新しいコンセプトが提案された。日本一のヤマユリの自生地がある行方市の行方市商工会が産業技術総合研究所つくばセンターと共同開発したヤマユリのオードトワレ「山百合のしずく」や農作業向けの新しい女性のファッションを提唱した「A-rue ロハス&農ファッション」(長久保優子さん、東茨城郡城里町)、トマトの栽培の農園がブランディングした「星の畑 きらきら輝くトマトたち」(農業法人アクト農場、東茨城郡茨城町)、商品にならない小魚を特産品にした「五代目常造【常陸産】地魚一夜干しセット」(樫村水産、ひたちなか市)などが知事選定された。
審査員からも奨励選定を受けた「つくば豚」(筑波ハム、つくば市)や廃棄されていた完熟トマトとタコを使った「多幸カレー」(時の広告社ゆたりや、水戸市)など食と農を結びつけた茨城ブランドが生み出されている。
「もの作りよりこと作りにスタンスが移ってきている。プロセス志向というか、結果として物ができる。そこ物語が存在する。心を形にすることが大切」とプラティック(実践)の結果が新しいデザインと可能性が生まれることを指摘。「農業など当事者がカッコ悪いものだと思っていても、そのかっこよに気付かない。異業種の人が入ることで新鮮で美しく思える。誰かが『良い』と言えばそのことに気付く」と応募作を総合評価する。
さらに「東京や湘南などでは分かりきったことしかできない。茨城はダサイというイメージだが、21世紀型の遊び心がある。これは力が入っていないから。いろいろな情報が白日の下にさらされている現在でも、茨城には神秘がある。日本最後の秘境が眠っている」と茨城の魅力とそれをデザイン化した応募作を評価する。
茨城は本当に「かっこ悪い」「魅力のない」県ナンバーワンなのか…。