茨城大らの研究チームが7月、五浦海岸(北茨城市)周辺に約1650万年前に巨大ガス田に匹敵する大規模ガス田が存在していたことを解明したと発表した。
同研究は茨城大大学院理工学研究科の安藤寿男教授の研究チームと北海道大学大学院理学研究院の鈴木德行名誉教授・学術研究員で実施。研究成果は地質学の国際学術誌に公開された。
研究では、五浦海岸の炭酸塩コンクリーション(層状の堆積岩)が海底地下深部の油ガス田から流出した天然ガスによって形成されたものであることを初めて明らかにしたことで、原油が存在する可能性を示した。
安藤教授によると、約1650万年前、大陸から日本列島が分離する地殻変動によって海底地下深部の油ガス田に亀裂が発生。その結果、海底に天然ガスの大規模湧出が始まり、それが数万年間にわたって断続的に続いたことで、その一部が炭酸塩を形成したという。
現存する五浦海岸の炭酸塩コンクリーションを構成する炭酸塩の体積は少なくとも600万立方メートル(東京ドーム5個分)以上。炭酸塩を形成するのは海底湧出した天然ガスの一部に過ぎないことと、風化・侵食で消失していることを考慮すると、実際の天然ガス量は巨大ガス田(可採埋蔵量950億立方メートル以上のガス田)に匹敵するとしている。
炭酸塩の炭素と海水に存在する炭素が異なると分かっていたが、その成因が判明していなかったという。研究チームは2013(平成25)年以降、炭酸塩コンクリーションから多くの試料を採取。野外観察や光学顕微鏡によって特徴を明らかにし、イオン化検出器を使った高感度分析法により、微量なガス成分の測定に世界で初めて成功した。
安藤教授は「かつての学部、修士卒業生との共同調査を基礎にした五浦海岸に関する論文を複数発表しており、これらの基礎的な研究なしに今回の論文はあり得ない。今後の地下資源探査の進展に期待する」としている。
2019(平成31)年度開始の三次元物理探査船「たんさ」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)による日本周辺海域の地下資源探査は、茨城沖も調査対象海域となっている。
五浦海岸は岡倉天心の旧宅や庭園があり、横山大観らを指導した場所として知られていることから、国の登録記念物に指定されている。
論文は今年5月15日に国際学術誌「Marine and Petroleum Geology」でオンライン公開され、7月14日に雑誌が発行となっている。