企画展「道草展 未知とともに歩む」が現在、水戸芸術館現代美術ギャラリー(TEL 029-227-8111)で開かれている。
ロイス・ワインバーガーさんの作品「フィールドワーク2014と2004」
水戸芸術館学芸員の後藤桜子さんは「近年、異常気象や環境汚染など、人間の営みが環境に与える影響は地球変動を引き起こし問題となっている。人と環境とのつながりを表現したアート作品を体感することで、人間と自然の共存を考えるきっかけになれば」と同展を企画。「道草して進歩の歩みを少し緩める」と「身近な自然=道草の影響を考える」という二つを意味する「道草展」としたという。
参加アーティストは、国内外で活躍する上村洋一さん(千葉出身)、ロー・ヨクムイさん(香港)、ミックスライス(韓国アーティストグループ)、ウリエル・オルローさん(スイス)、露口啓二さん(徳島県)、ロイス・ワインバーカーさん(オーストリア)の6組。日本初公開作品や新作を含む約40作品を展示する。今年亡くなったロイス・ワインバーカーさんによる遺作「ワイルド・エンクロージャー」は、芸術館の広場の芝生を掘り起こして囲み、人間の介入することのない「自然発生する植生」そのものをアートにした注目すべき作品という。
同展は、現代アートの表現技法である「インスタレーション=空間全体作品」が多く、来場者がアート空間に入ることで五感を刺激して体感できる。上村洋一さんの新作「息吹のなかで」は、北海道斜里町で録音した流氷音と電子音をミックスした音楽が鳴り、床に砂を敷き詰めた真っ暗な空間にブラックライトを持って入り、自らライトを照らした先に浮かびあがるメッセージを読み取るという作品。上村さんは「人間は真っ暗な空間にいると恐怖感に襲われるが、視覚を失うとほかの感覚が研ぎ澄まされる。その感覚を味わってほしい」と話す。「地球温暖化で流氷もかなり減少している。音源の中のかすかに聞こえるアザラシの声が象徴しているように自然の声など、見えないものへの感覚がこの先人間にとって大切。視覚的なものに対するアンチテーゼになっている」とも。
「道草展」では新型コロナウイルス感染症対策として会場内での会話ができない代わりに、作品を鑑賞した感想を芸術館のギャラリートーカーと会場に設置した電話で対話できる「対話の電話」を行う。「対話の電話」は、9月27日、10月17日、10月18日、11月7日。14時30分~15時30分。参加無料。
開催時間は10時~18時(入場は17時30分まで)。月曜休館(9月21日は開館)。入場料は、一般=900円、高校生以下・70歳以上・障害者手帳を持っている人と付き添い1人無料。11月8日まで。