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水戸芸術館で茨城県出身デザイナー須藤玲子さん展覧会 布作りの舞台裏表現

大空間に展示されるこいのぼり

大空間に展示されるこいのぼり

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 茨城県出身のテキスタイルデザイナー・須藤玲子さんによる展覧会「須藤玲子NUNOの布づくり」が現在、水戸芸術館(水戸市五軒町)で開かれている。

水戸芸術館のアートタワーモチーフにした「タワー」

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 須藤さんは1953(昭和28)年茨城県石岡市生まれ。国内外で独自の布作りを展開する企業「布」(東京都港区)の社長として、同展の表題にもあるテキスタイルデザイン・スタジオ「NUNO」を率いる。同展では、世界的なテキスタイルデザイナーである須藤さんらの活動を包括的に伝える展示や、同館の空間を生かした大型インスタレーションを展示する。

 同展は2019年、香港のアートセンター「CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)」で初めて企画・開催されたもの。その後ヨーロッパ各地を巡回し、昨年から国内でも開催されている。企画する同センター館長の高橋瑞木さんは「アジアのテキスタイルアートにおいて須藤さんのデザインは突出していて、これほど素材や技術の可能性の全てを引き出しているデザイナーはいない。コロナ禍を経て、やっと日本の皆さまにお披露目できるのがうれしい」と話す。

 同展の特徴の一つが、完成された作品としての布ではなく、それらの生産工程や技術といった舞台裏に注目している点。代表作が誕生する過程にあった須藤さんの工夫と姿勢を、音や映像による演出で表現する。廊下に掲示された大きな地図では、制作に関わる工場が一覧になっており、高橋さんは「あらゆる職種の人が関わってくれ、ようやく美しい布が私たちの手元に届けられる。この地図は工場、技術者の皆さんに敬意を払う須藤さんらの制作への態度を示している」という。

 空間を生かした作品も特徴的。入り口の階段頭上に展示するのは新作「タワー」は、同館のシンボルである建築家・磯崎新によるアートタワーをモチーフにしたデザインで、150年以上続くテキスタイル工場「マルナカ」(埼玉県飯能市)と制作したもの。須藤さんは「タワーに負けないような織物を作りたかった。磯崎さんへの思いを込めて、マルナカとの共創を目指した」と制作過程を振り返る。

 フランスの展示デザイナーのアドリアン・ガルデールさんと共同制作する大型インスタレーション「続・こいのぼりなう!」では、須藤さんらが制作したテキスタイルによるこいのぼりを屋外の広場と屋内の展示空間に多数展開する。屋内には、水戸藩に由来する染色技法「水戸黒」を使ったこいのぼりが2匹あり、これは同展に向けて大谷屋染工場(本町)の職人と制作したという。続く展示室では、こいのぼりに使われた布のサンプルを展示し、来場者は触って感触を楽しむことができる。「テキスタイルはやはり手触りが大事で、展覧会の際にはこの手法を取り入れている」と須藤さん。「たっぷり触って楽しんでもらえれば」とも。

 開館時間は10時~18時。月曜休館。入場料は、一般900円、高校生以下と70歳以上は無料。5月6日まで。

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