茨城大学院理工学研究科博士後期課程の高橋健太さんが社長を務める「Dinow」が9月25日、茨城大学から茨城大学発ベンチャーの称号を授与された。
同社のミッションは「DNA損傷評価から健康と安心を実現する」。「DNA損傷」という指標をもとに健康状態を可視化し、それらに対して適切なソリューションを提案することで、日々の生活や職務の中で抱く不安を取り除いた安心と健康な状態の実現を目指す。
茨城大学でDNA損傷について研究する中村麻子教授と高橋さんが共同で2020年3月11日に設立した同社。2011(平成23)年東日本大震災の際に被災した方々から感じた「放射線の影響に対する強い不安」をどうにか解消したいという中村教授の気持ちをきっかけにDNA損傷評価の社会実装に関する研究を進めてきた。
高橋さんは日本宇宙生物科学会、放射線影響学会で研究内容を発表する度に福島や宇宙関連に精通した参加者から「必要なものだから引き続き研究を頑張ってほしい」と声を掛けられ、「これは確実に必要としている人がいる。論文を出して終わりの研究にとどめず、サービスの社会実装まで自分の手で取り組みたい」と思うようになったという。
現在同社は、放射線影響評価、修復能力評価、生活習慣評価の3つのサービスを展開予定で、中でも放射線影響評価サービス(放射線が体に当たった時に体にどのような影響があるのかを推定する)を1番にリリースしようと考えているという。同サービスで福島地域のビジネスアイデア事業化プログラムに参画しており、補助金を得ながらの同地域住民を対象にした試験運用を計画している。これを経てサービスの形が定まり次第、サービスの正式リリースが見えてくる。同時に、不足している裏付けになる研究データの収集も並行して進めている。
すでに大学内外から反響があり、設立当初の3月中に全国紙に取り上げられたことが後押しして、研究機関やベンチャーキャピタルから協力したいという内容の連絡があったという。
高橋さんは「今後、民間宇宙旅行が一般的になっていくと言われているが、宇宙空間で放射線が人体にどのような影響を及ぼすか、まだ不確実な部分が多い。宇宙開発事業が盛んになっているが、我々も必死にそのスピード感に追いつき、放射線の面で民間宇宙旅行の安全性を担保できるサービスにして行かなければならない」と未来を見据える。「なるべく早く困っている人の手にサービスを届けたい。現在安心して仕事できていない人の不安を解消したい」とも。
「現状、メンバーは学生である自分と、研究者として多忙な教授のみ。今後は自分たちにない知識・経験を持った人、企業などとつながり、協力していけたら」と呼び掛ける。