自転車を解体せず鉄道車両内に持ち込む「サイクルトレイン」の実証実験が12月5日、鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の水戸駅~長者が浜潮騒はまなす公園前駅間で行われた。
この日は、沿線の自治体関係者やメディア関係者など14人が自前の自転車を持って鉄道車両内に乗り込んだ。実証実験は沿線自治体などでつくる大洗鹿島線を育てる沿線市町会議事務局と鹿島臨海鉄道を主体に、JR東日本水戸支社も協力した。「サイクリング王国いばらき」の実現に向け、サイクルツーリズムの推進をはじめとした自転車活用の機運が高まりつつある茨城県の流れを受け、サイクルトレイン本格運行の課題を探るのが目的。
当日は、参加者が水戸駅の一般改札の並びにある業務用搬入口から自転車を持ち込み、階段を通ってホームへと降りた。実験には2両編成の8000形専用列車が使われ、参加者らが自転車の分解や折りたたみをせずにそのまま乗車。水戸駅を出発し、自転車を支えながら長者が浜潮騒はまなす公園前駅で下車、サイクリングに出発した。
サイクリングでは、北浦沿いの約32キロを走行。荒野台駅で再び乗り込み、水戸駅まで戻った。実証実験を終え、鹿島臨海鉄道企画開発部次長の鈴木賢嗣さんは「駅施設内や車内でのルールに課題が見えた。根本的に駅施設内や車内の作りが自転車利用を想定していない中で、ほかのお客さまを考慮した安全ルールや指定滞留場所などの対策、時間の制約を見越した対応をする必要があるのではないか」と話す。
「多くの人員の動員、綿密な準備をすれば、サイクルトレインが可能であるという確認はできたというところ」とも。「今回は多くの方が利用する水戸駅を発着とさせていただいた。JR東日本には、企画の段階から丁寧な助言をいただき感謝している。関東鉄道は既にサイクルトレインを行っているので、今後もノウハウを勉強させていただければ。連携が進んで、県内のサイクルトレイン網ができると、サイクリストさんの楽しみも増えるのでは」と期待を寄せる。
大洗町まちづくり推進課の担当者は「実験を通して課題が見えた。これから協議を重ねながら、次に結びつけていきたい」と話す。
「いばらきサイクリングサポートライダー」の會澤伸一さんは「サイクリングの行き着くところは自転車と旅=サイクルツーリズム。今回はその縮小版。これを基本に全国にツーリズムがつながっていったらすてき」と笑顔を見せる。笠間市の関係者は「列車内の安定感が想像以上にあった。そのまま自転車を持ち込めるのはありがたい。初心者でも参加しやすいのでは」と話す。
同路線では来年度以降も、さまざまなパターンの実証実験などで可能性を探る予定という。