
総合酒類メーカー「明利酒類」(水戸市元吉田町)が製造するウイスキー「高藏(たかぞう) REBORN PLUM WINE CASK FINISH」が、アジア最大級の蒸留酒品評会「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)2025」で金賞を受賞した。東京ウイスキー&スピリッツコンペティション実行委員会が5月15日、発表した。
蒸留所として初のリリースでTWSC金賞を受賞した「高藏REBORN PLUM WINE CASK FINISH」
江戸時代に起源を持つ老舗酒造である同社。1959(昭和34)年の火災により蒸留所を失って以降、ウイスキー製造を中止していたが、2022年に同社常務の加藤喬大さんを中心に製造免許を再取得。本社工場内に「高藏蒸留所」を設立してウイスキー製造を再開した。同商品は同蒸留所で熟成した最初のウイスキー原酒による製品となる。今回の金賞受賞を受け、加藤さんは「60年ぶりに蒸留所を復活させて初めてのリリースで金賞が取れ、これほど早く結果を出せたことへのうれしさと驚きがある」と話す。
同商品は同社の「百年梅酒 ウイスキー樽(たる)熟成」の熟成に使用したプラムワインだるを再利用して熟成し、フルーティーな風味が特徴。加藤さんは「梅酒だるで熟成させたウイスキーは珍しく、私たちが根差す水戸という土地の風土を押し出した独自性を評価してもらえたと思う。水戸の気候もウイスキー造りに適していて、冬に氷点下まで下がり、夏は40度近くまで上がる気温差によりたるがよく呼吸し、熟成が早く進むことも有利に働いた」と話す。
同社でのウイスキー製造再開について加藤さんは「一番の動機は、私の曽祖父である高蔵がウイスキーを作っていたという歴史と、それが火事によって止まってしまっていたということ。きっと無念だったとも思う。同じ土地で同じ水を使って、尊敬する曽祖父の事業を自分がもう一度引き継ぎたいと思った」と話す。蒸留所設立前の2020年ごろから、各地の蒸留所を訪ねて知見を深めたという加藤さん。金賞受賞の知らせを受けた瞬間については、「社員みんな、飛び上がるほど喜んでいた。社内のフロアが沸き立つような感じで、本当にうれしかった」と振り返る。
今後は「茨城県産の大麦麦芽を使う方針にしていきたい」と話す加藤さん。来年には同蒸留所で3年熟成したシングルモルトのリリースも予定する。