常磐大学が11月24日、シンポジウム「Withコロナ時代のSDGs(持続可能な開発目標)」をオンライン開催し、58人が参加した。
当日は、新型コロナ感染拡大の収束にめどが立たない中、新たなパンデミック(世界的大流行)がどのように私たちの生活に影響を及ぼしているのかを経済・社会・環境の視点から検証。新型コロナがSDGsの実現にどのような影響を与えているのかを考察し「Withコロナ時代」に向けてSDGsをどう推進すべきかを話し合った。
基調報告では、富田敬子学長が「SDGs最新の動向」と題して、2015(平成27)年9月25日に、ニューヨーク・国連本部で開催された国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に込められるメッセージを解説。
「『2030アジェンダ』は、経済・社会・環境という3つの要素が複合的に絡み合っている」として、「これから社会づくりをするにあたっては 先進国・途上国と二分化するのではなく、お互いに協働しながらグローバルアジェンダに取り組まなければいけないという強いメッセージが含まれている」と説明。SDGsの副題としても取り上げられる「誰も取り残さない」というメッセージを挙げ「これから先、わたしたちが作らなくてはいけないのは、社会的格差がないように、社会的弱者が取り残されないような社会づくりをしなくてはならない」と話す。
国連は今年5月、新型コロナウイルスの感染第2波が到来した場合、2020年の世界の実質経済成長率が前年比マイナス4.9パーセントになると予想を明らかにしている。ウイルス再流行で外出制限や国境封鎖などの措置が21年前半まで延長されるおそれがあると指摘している。
SDGs採択から5年の節目となる今年、17の目標が掲げられていたが、ゴール14ー5に当たる「2020年までに、国内法および国際法にのっとり、入手可能な最適な科学的情報に基づいて、沿岸・海洋エリアの最低10%を保全する」の達成のみにとどまっている。極度の貧困をなくすという目標では、新型コロナウイルスの影響により、世界の貧困率の経過の伸びは鈍化し、2030年の貧困率はおそらく6%にとどまってしまうのではないかと予測されている。「健康指標の改善」や「質の高い教育を届ける」という目標もコロナによって足踏み。世界190超の国・地域で16億人の子どもや学生に影響が生じている。
「今、多くのステークホルダーに方向性の改革が迫られている」と富田学長。「SDGsは世界中の知恵の集約といってもいいブループリント。あらためてこの危機的な状況にある私たちの生活をSDGsに照らし合わせ、逆境の中でこそ戦略を考える必要がある」とも。
基調報告後は、藤田正孝国際機関日本アセアンセンター事務総長が「コロナ禍と貧困」、高橋靖水戸市長が「コロナ禍と保健医療」、三富和代NPO法人ウィメンズネットらいず代表理事が「コロナ禍といのち・暮らし」、三村信男茨城大学地球・地域環境共創機構特命教授が「コロナ禍と環境・災害問題」について事例発表した。
コロナ禍のSDGsのキーポイントとして、藤田さんは「現在の状況をネガティブに捉えるのではなく、レジリエンスをキーワードに取り組んでいくこと」と話し、高橋さんは「子ども支援、教育の充実、医療を整備することが大切。安心がキーワードになる」と話す。