東日本大震災から10年を迎えることから企画された「3.11とアーティスト:10年目の想像」が現在、水戸芸術館現代美術ギャラリーで開かれている。
東日本大震災では水戸芸術館も被災。パイプオルガンが破損するなど甚大な被害を受けた。震災翌年の2012(平成24)年には、展覧会「3.11とアーティスト:進行形の記録」を開催し、震災を受けて24組のアーティストが行ったさまざまな活動を、芸術であるか否かを問わず、時間軸に沿って紹介した。
「3.11とアーティスト:10年目の想像」は、「想像力の喚起」をテーマに据える。
原子力発電所の事故を受け、人々がちまたで交わした会話を再現した映像作品を通して10 年前の私たちを思い起こすほか、被災地に通い続けたアーティストが現地で見た風景や聞いた言葉を、絵やテキスト、映像などで表した作品を通して、10年間という年月の経過、その中における変化と不変を見つめるものとした。
同展には、画家の加茂昂さん、映像作家の小森はるかさんと画家で作家の瀬尾夏美さんのアートユニット、美術家の佐竹真紀子さん、美術家・演出家の高嶺格さん、美術家のニシコさん、美術家で映画監督の藤井光さん、東京電力福島第一原子力発電所の事故によって生じた帰還困難区域内で2015(平成27)年から行われているアーティスト12組によるプロジェクト「Don’t Follow the Wind」の7組が参加した。
小森はるかさんと瀬尾夏美さんによる、陸前高田の変わりゆく様子を描写したテキスト、絵、映像からなる作品や、加茂昂さんが福島県の帰還困難区域周辺に通い描いた絵画などを展示する。
美術家で映画監督の藤井さんは、3.11以降、東日本大震災の禍根をいかに表現し語り継ぐかを探求。その過程で直面したいじめや差別といった「心の問題」と、展示準備期間に発生した新型コロナウイルスによる世の中の動きから「放射性物質とウイルス=未知のもの・見えないもの」に対する「恐怖」が芽生えさせる根拠のない差別意識に着目した。
1968(昭和43) 年のキング牧師の暗殺事件を受け、アメリカ北西部のアイオワ州・ライスピルの小学校でジェーン・エリオットさんが行った人種差別について体験を通して考えさせる実験授業を「3.11版」に書き換え現代の日本人の小学生とともに再演し、新作映像作品として上映する。
開場時間は10時~18時。月曜休館。入場料は、一般=900円、高校生以下・70歳以上、障がい者手帳など所持者と付き添い1人まで無料。5月9日まで。