水戸市在住の画家・亀井則道さんが現在、小学校の授業などで使う学童用水彩絵の具を使った作品制作を行っている。
亀井さんは水戸市出身・在住。大学進学を機に水戸を出た後、アパレル系商社の営業企画職などを経験。2017(平成29)年1月、仕事の疲れもあり人生初のインフルエンザにかかり診察を受けた病院帰りの買い物途中、偶然手に取ったのが小学校の図工授業で使う学童用水彩絵の具だったという。
亀井さんは「絵でも描いてみようかと絵の具を手に取った。小・中・高と絵を描くのは好きだった」と振り返る。復職当初は土曜・日曜だけ絵を描いていたが、次第に毎朝10分~15分の時間を作り、絵を描くようになった。
「友人に描いた絵をメッセージアプリで送ることが続いていたある日、絵の発表の場としてインスタグラムを薦められた。友人にとっては連日送られる絵の反応に困っていたのかもしれないが、そこから世界が広がった」と亀井さん。2018(平成30)年夏に勤めていた会社を退職し水戸に帰郷。現在は地元で作品制作や個展開催、学童保育施設での美術指導などを行っている。
これまで風景画をメインに約500枚の作品を手掛けてきたという亀井さんだが、作品中に人と建物の絵は極力入れないようにしているという。理由について、亀井さんは「見た人が主役として絵の世界に入り込んだり、実際にこの場所に行ってみたいと思ったりしてほしい」と明かす。
亀井さんは現在、米国、ロシア、トルコなどの海外を中心に約1.5万人のインスタグラム・フォロワーを持つ。風景画の背景は、メッセージでやりとりをして許諾を得た海外写真家の作品をベースにすることもあるという。「描いた絵をメッセージで送ると、写真家が絵をシェアし反響が広がるなど国を超えた交流がある」と亀井さん。
公開作品に「Water color painting(透明水彩)」とハッシュタグに入れ投稿すると、海外のファンから画材を聞かれることも多いといい、「日本の小学生が使う絵の具だ」と通販サイトを紹介することもあるという。
亀井さんは「学童用水彩絵の具は重ね塗りや絵の修正に向き、小学生のために作られた画材。油絵や水彩画用の絵の具とは違う素材でできている」と話す。自身の作品制作をきっかけに、「ぺんてる」茨城工場(小美玉市)の社員との出会いもあったという。亀井さんは「日本にしかない画材の良さを多くの人に知ってもらえたら」と話す。
亀井さんは子どもたちに絵を指導する際、慣れていなくても描き切れるよう、大きいサイズの紙でなくA4サイズの用紙何枚も用意するという。「失敗してもいいよと声を掛ける。私自身、絵を正式に学んできたわけではないが、やり方は一つではない。成功体験の回数を増やすことが大切」と話す。
「絵を通して多くの出会いや励みをいただいている。画材も道具ももっと自由でいいのだと伝えたい」と笑顔を見せる。
亀井さんは7月20日~26日、アートギャラリーサザ(ひたちなか市共栄町)で水彩画の個展「亀井則道水彩画展~学童用水彩絵具の世界~」を開く予定。