
画家の近藤亜樹さんによる個展「我が身をさいて、みた世界は」が現在、水戸芸術館現代美術ギャラリー(水戸市五軒町)で開催されている。
近藤さんは1987(昭和62)年北海道生まれで、現在は山形県を拠点に活動する画家。公立美術館での個展開催は今回で2度目。近藤さんによると、約1年かけて準備した同展は過去最大規模になるという。2022年以降の作品24点と新作64点の計88点を展示する。
目玉作品は幅9.15メートル、高さ2.27メートルの新作「ザ・オーケストラ」。近藤さんは「高速バスから見た黒焦げた巨木と雲、五線譜のように見えた電線の風景から着想を得た」と話す。高速バスの中で近藤さんが聴いていたのが、同館の元館長で指揮者の小澤征爾さんのオーケストラ音源。近藤さんは「不思議な縁を感じた。小澤オーケストラのような音を形にすることを突き詰め、この絵に必要なのは大きなうねりだと解釈した」と振り返る。
同展の展示構成は、同館の設計に携わった建築家の青木淳さんが担当する。「サボテン」シリーズでは、青木さんの発案で絵を空間に立てて展示し、近藤さんは「空間も絵の一部だという発見があった」と話す。そのほかの展示を行う展示室についても、「最後の部屋は大きな壁に作品が1点だけで、ただその白い空白が絶対的にその絵には必要だった。これまで展示を重視して考えたことがなく、青木さんのおかげで自分の世界が広がった」と近藤さん。
「今回は『近藤亜樹は何ができるのか』を一つの軸とした」とも。「展覧会の準備で苦しい時期に、枯れかけたサボテンが目にとどまった。サボテンが少しの水でも生き延びようと成長し、やがて自分の身を裂いて新芽を生やす姿を見て、自分もわが身を裂いてどこまで表現を広げていけるか、そうやって生まれた絵からどんな世界を感じ取ってもらえるかと思った」と話す。
担当学芸員の後藤桜子さんは「近藤亜樹という作家がこれからどのように飛躍していくのか、作品を通じて語り合う場になれば」と話す。近藤さんは「難しいことを考えずに楽しんでほしい。絵画と出合って心に生まれた感情を体験してもらいたい」と来場を呼びかける。
開催時間は10時~18時。月曜休館(5月5日は開館)。5月6日まで。入場料は、一般=900円、高校生以下・70歳以上無料。4月20日は14時から担当学芸員によるギャラリーツアーを行う。