
現代美術家の日比野克彦さんによる展覧会「日比野克彦 ひとり橋の上に立ってから、だれかと舟で繰り出すまで」が現在、水戸芸術館(水戸市五軒町)で開催されている。
作品の前で展覧会の表題について「5歳の時に橋の上で『ひとり』を感じ、それが表現活動の始まりだった」と話す日比野さん
日比野さんは、1980年代にダンボールを素材にした作品で日本グラフィック展などの公募展で立て続けに大賞を受賞。1990年代には形のない物の表現を模索し、2000年代にアートプロジェクトを展開。作家活動を拡大してきた。
同館では日比野さんの個展を初開催した2005(平成17)年以後、「明後日朝顔プロジェクト」「HIBINO CUP」など同館を拠点としたアートプロジェクトを継続している。同館現代美術センター芸術監督の竹久侑さんは「地域連携としてのアートプロジェクトに注力しているのが当館の特長。同館が日比野さんと共に継続してきたものがあることを踏まえ、日比野さんの芸術活動を検証する展覧会を、独自の方法で実現できると考えた」と話す。
今回の展覧会開催に当たり、日比野さんは「自分の作品だけでなく、アートプロジェクトに関わった人たちの『声』も展示している」と話す。170点以上の作品を章立てで展示し、第1章では、代名詞とも言えるダンボール作品に加え、幼少期の作品とエピソードや母の見音さんが日比野さんの作品をリメークして作ったクッションなどを紹介する。第5章では、日比野さんの活動年譜を展し、絵本や漫画、イラスト、関係者から寄せられたコメントからアーティスト「日比野克彦」を多角的に捉える。
竹久さんは「形のないプロジェクトを展覧会で紹介するに当たり、工夫が必要だった。さまざまなフィールドで日比野さんに関わっている人たちの声を聞き、日比野さんの独特の動き方や態度が浮かび上がるような形で紹介したい」と話す。
「日比野さんは、今を生きることで精いっぱいな人たちに、明日へ、あさってへと少し先に思いはせる時間と場を差し出す、アートの力を信じている人。『あなたは一人じゃない』と気にかけてもらうことから得られる安心感の価値を確信している」とも。
日比野さんは「見に来るというより体験しに来る展覧会。社会との連携、世界との関わりがアートの一番生き生きしたところなので、楽しんでもらえたら」と来場を呼びかける。
開催時間は10時~18時。月曜休館(祝日の場合翌日休館)。入場料は、一般=900円、高校生以下・70歳以上無料。10月5日まで。