茨城県が12月20日、「常陸乃国まさば」の初出荷を行った。同日、茨城県内の飲食店でマサバを使ったメニューの提供が始まった。
2022年度から那珂湊漁港で養殖に取り組んでいる「常陸乃国まさば」。11月26日は、横浜冷凍、那珂湊漁業協同組合、茨城県立海洋高校の教員と水産クラブの生徒たち、地元飲食店の関係者が県庁を訪れ、大井川和彦知事にマサバのブランド名を「常陸乃国まさば」とすることを発表した。
初出荷の12月20日は早朝から那珂湊漁港で取り上げ作業が行われた。280~400グラムのまさば650匹が水揚げされ、県立海洋高校の生徒たちが血抜きなどの作業を行った。海洋高校2年の大津直也さんは「約1年間、週4日餌やりを続けてきた。高校からいけすまで500メートルの距離だが、多い時は150キロから200キロの餌をリヤカーで運び大変だった。今日は魚の生きがよく締めるのに苦労したが、とても大きく重い良いサバに育った。養殖サバはおいしく、生で食べられる新鮮さが特長。多くの人に味わってほしい」と話す。
農林水産部水産振興課では同事業初年度だった昨年の経験を生かし、餌の与え方やタイミングを工夫。茨城県農林水産部水産振興課の服部卓巳副参事は「昨年と比べて大きめに育ち、生存率も向上した。これまでの試験的な取り組みを踏まえ、今年は商業化に向けてより実践的な流通体制で臨んでいる。『常陸乃国まさば』を地域の名物として育てていくため、高校生や地元漁協の皆さんと一緒に養殖事業に取り組んでいきたい」と話す。
同課栽培施設グループ主任の三浦崇弘さんによると、「常陸乃国まさば」の最大の特徴は、人工種苗由来で人工餌料による育成を行うことで、アニサキスのリスクを極めて低くし、生食を推奨できる点にあるという。消費者・飲食店アンケートでは「安心して生食できる」「ほどよい脂のり」「青魚臭が少ない」「ほどよい弾力」「鮮度抜群」などの評価を得ており、「生産から出荷まで徹底した品質管理を行い、活き締め出荷されることで極めて鮮度の良い状態が保たれている」とも。
養殖の特徴は、ICT技術を活用した遠隔での管理システム。那珂湊漁港のいけすに設置された水中カメラでリアルタイムの映像を確認しながら、県水産振興課執務室から餌やりのタイミングや量を遠隔操作で設定。悪天候時や少ない人員でも効率的な管理が可能となっている。
養殖の現場では、県立海洋高校の水産クラブの生徒たちが日々の魚の観察や給餌機への餌の補充、死魚の回収などの管理を担当。事業全体では、那珂湊漁業協同組合が事業地調整を、茨城県栽培漁業協会が種苗育成を担当している。流通面では横浜冷凍が全体調整、那珂湊漁業協同組合が出荷作業補助を行う体制を整えている。
三浦さんによると、近年茨城県沖だけでなく、全国的にも海水温上昇の影響で天然サバの不漁が続いているという。l2023年冬の試験出荷では、多くの消費者から「(常陸乃国まさばを)また食べたい」との評価が寄せられたという。
「常陸乃国まさば」提供店は、「Sushi Dining蛇の目」(水戸市)、「磯料理とワインの宿春日ホテル 海鮮レストラン浜辺」(ひたちなか市)、「大洗海鮮市場海鮮どんぶり亭」(大洗町)など、「いばらきの地魚取扱店」と「ひたちなか市地魚応援隊登録店」で取り扱う。