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【2021-22】茨城県・プレゼンテーション大会「IBARAKIドリーム★パスAWARD」選抜16チーム

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今年度で3回目となる「IBARAKIドリーム★パス」事業。主催の茨城県教育委員会が展開する同事業は2019(平成31)年7月、茨城県内の中高生を対象にスタート。地域の課題発見・解決に向けた企画立案や実践を通し、夢の実現に向けて積極的に挑戦するアントレプレナーシップ(起業家精神)を持った人材を育成しようと進めている。今年は、県内の付属中1年から高校3年生まで、40校・190チームの応募があった。書類選考、面談による選考を経て、地域課題解決型、開発型合わせて16チームが戦略チームとして選出された。1月30日に、オンラインでプレゼンテーション大会を開く。(新型コロナ感染拡大防止のため、オンラインに変更)

地域課題解決型(8チーム)

土浦第一高等学校附属中学校
「スライムで農業してみませんか!?#土浦 #SDGs #レンコン」

<企画概要>
土浦市の農業従事者を応援するために、水分補給率の高いスライムに着目し、農業用の土に改良できないか考えた。製作にあたっては、化学燃料から作られる原料を用いず、土浦市のブランドであるレンコンの端材を原料に用いることで循環型農業を目指すとともに農業発展に貢献する。

<中間報告会>
レンコンデンプンと食物繊維を分け、デンプンをスライム化。さまざまな組み合わせで検証したところ、ゲル状にならないものや乾燥後の吸水が見られないなどがあったが、ゲル強度向上のためにコンニャクマンナン、石灰などを使ったところ硬いゲルが完成。吸水(保水)率なども約80%を実現した。強度向上などのため、架橋材としてニガリを使ったスライム作成にも成功した。併せて食物繊維の肥料化も始め、今後は成功したスライムの保水能力の検証や実際の野菜の栽培試験などを進めていく。

 

太田西山高等学校
「IBARAKI prime」

<企画概要>
健康に対する意識の高い人を対象とした、健康ニーズを満たす食材の利用法(健康目的別時短レシピ)や、サービス利用者のレシピの利用状況に連動した食材の提供により、より健康で充実した人生を過ごす時間をサブスクリプションモデルで提供する。

<中間報告会での進捗>
本年度取り組む健康目的の焦点化として、「免疫」を設定。「普段からの免疫力が低い傾向にある人は新型コロナウイルスに関係なくウイルスを発症しやすい」と定義し、免疫力を効率良く上げられる時短でできる料理レシピがあれば、この時世に貢献できると考えたという。これまでにレシピサイトの調査をはじめ、レシピ作成のための文献調査、協力者探しを行い、筑波大学の麻見直美(おみなおみ)准教授の協力を得ることになった。今後は、麻見准教授とのディスカッションや飲食店の人へのヒアリングを行うほか、一般般の人からのレシピ公募、身近な人へのモニター依頼などによるデータを集めていく。

 

水戸第一高等学校
「慶喜で水戸にさらなる観光資源を!~水戸城復活を目指して~」

<企画概要>
水戸の歴史を若い人に伝えるために、徳川慶喜(よしのぶ)と正室美賀子のPR動画を制作するとともに、若者受けする名物「水戸チーズ慶喜(ケーキ)」を考案する。さらには、水戸城をプロジェクションマッピングで復活させ、観光客増加につなげる。

<中間報告会>
徳川慶喜と美賀子が登場し、「水戸学の道」の景観をPRする動画を撮影したほか、「慶喜」の読みを「ケイキ」と掛け発案した「水戸チーズ慶喜(ケーキ)」の開発を進めた。「森のシェーブル館」の協力を得て、試作を重ねた。今後は、動画の編集、完成、配信を行うほか、「水戸チーズ慶喜」のレシピやデザインを確立していく。

 

水戸第三高等学校
「点と点がつなぐ世界」

<企画概要>
差別や偏見のない社会にするために、障がいの有無に関わらず、あらゆる世代の人たちに楽しむことのできるボードゲーム(人生ゲーム)を制作する。

<中間報告会>
近隣の高校生に協力を依頼。障がいの有無へのプラスの印象やマイナスの印象を調査。「なぜ特別感がなくならないのか?」という質問には、「交流の機会が少ない」という声があったという。背景として、身近に障がいを持つ人が少ないことや、積極的に声を掛けることへの抵抗感が挙げられた。数字に凹凸をつけるなど工夫を凝らしたサイコロを使ったゲームを試作し、盲学校で試作品による体験の機会を設け、ゲームでの交流を図った。改良を重ね、今年1月に完成させた。

 

茨城東高等学校
「茨城町における里山の整備と間伐材を活用したビジネスプランの提案」

<企画概要>
茨城町の自然を保護するために、地域に広がる里山整備を実施するとともに、その際に出た「間伐材」を活用し、経済創出に取り組むことで、持続可能な循環型社会を目指す。

<中間報告会>
茨城町は多くの放置林があることを知り、改善できないかと考え、放置林の状況や問題について、直接調査するために茨城町役場を訪問。国有林や公有林は国や自治体が税金で整備しているが、私有林は個人の責任とされているということや、私有林からお金を生み出す仕組みが整っていないことを知った。茨城県の政策「いばらきキャンプ」やまきより熱効率が良く、災害時にも利用できるなどの面から、スウェーデントーチに着目。茨城町にある「しもはじ埴輪キャンプ場(NPO環~WA)」の協力を得て、間伐作業やトーチ製作、販売に取り組んだ。今後、販売予約済みのスウェーデントーチの作製や企業への営業を行っていく。

 

鉾田第一高等学校
「HOKOTA STYLE~空き家×小倉百人一首かるた~」

<企画概要>
鉾田市の空き家、空き店舗を再利用し、「小倉百人一首競技かるた」で文化の香り漂うまちづくりをするために、多世代交流の場にすることやジュニア世代を育成するなどし、鉾田市を「かるたの聖地」にすることを目指す。

<中間報告会>
現状分析として、鉾田市の空き家・空き店舗の状況を調査。県内市町村の空き家率は、ワースト3位となる18.2%であることを知った。今回題材としている「競技かるた部」には、全国かるた協会会員数が2010年の2000人から2020年の5050人へ増加していることが背景にある。現在、世代交流の拠点候補の空き家の交渉を進めるほか、競技かるたのジュニアセミナー、シニアセミナーでの広報活動を進めていく。

 

鹿島高等学校
「土壌pHがイネの生育速度に与える影響~細胞分裂と細胞成長からのアプローチ~」

<企画概要>
土壌pHが植物の生育に与える影響を調査し、より栄養素を効率的に摂取することができる最適なpH条件を見出すことで、農作物の生産効率を上昇させ、ひいては世界中の飢餓で苦しむ人々へ食料を分配することが可能になると考え検証を目指す。

<中間報告会>
土壌に石灰をまくことへの疑問から、イネの種子を入れ、pH値を変えた溶液に塩化水素や水酸化ナトリウムなどを加え、イネの根の長さを図ることで生育に与える影響を検証。イネの根の生育状況には、pH7>pH8>pH6の順に盛んであり、pHが生育に影響を与えることを確信。「土壌に石灰をまく理由には、土壌を酸性から中性に戻すためなのではないか」と仮説を立てた。今後は、対象をイネではなく玉ネギに切り替え、細胞分裂や細胞成長を観察していく。

 

水海道第一高等学校
「ニホンミツバチが住める里山を育てる」

<企画概要>
森の生態系を維持し、野菜や果物などの農作物の安定した収穫を守るために、ニホンミツバチが訪花する頻度の高い蜜源を増やしたり、羽音解析による行動パターンの解析を行ったりして、受粉昆虫が住める森を維持することを目指す。

<中間報告会>
養蜂研究会の協力を得て、養蜂体験を実施。ミツバチが受粉昆虫であり、植物の受粉の媒体として自然・農生態系に貢献していたが、環境の悪化により受粉昆虫全体の減少が懸念されていることを知ったという。飼育箱の養蜂で、暑さ対策や継ぎ箱を行ったほか、箱内の環境調査のために、温度・湿度・羽音の解析のための記録データロガーを設置。電子工作・プログラミング解析を進めた。今後は、巣箱の改善や、蜜源を増やす取り組み、設置場所の工夫などを行い、ニホンミツバチをはじめとした受粉昆虫がすめる森を維持するという里山の計画を進めていく。

 

開発型(8チーム)

勝田高等学校
「ゴミの山を宝の山に-sweet potatoes will be your knight-」

<企画概要>
1日30トン出るサツマイモの皮(ゴミ)の廃棄に悩む干し芋農家のために、現在コロナ禍で需要が高まっているせっけんに皮を配合することで、新しい価値を見出すことを目指す。また、商品化することでひたちなか市の魅力を伝えていく。

<中間報告会での進捗>
せっけん完成に向けては、企業調査、成分の抽出方法の調査、せっけんの製作、使用感調査、オンライン面談を実施。商品化に向けた取り組みとして、ひたちなか市商工会議所との連携を図っている。
今後、見た目、匂いの改善を行うほか、長期的な効果の確認、商品化するにあたってのパッケージ制作を進める。

 

鹿島高等学校
「外来魚を対象とした効果的な調理法の探索~外来魚からスナック菓子を作れるか~」

<企画概要>
外来魚の被害に遭っている漁師や、在来種を保護するために、霞ヶ浦で捕獲した外来魚でスナック菓子を作るとともに、特産品として流通させ、茨城をアピールする。また、外来魚の個体数を減少させることで在来種がすみやすい環境作りも目指す。

<中間報告会>
コオロギのスナック化に着目。霞ヶ浦のアメリカナマズも同様に食品化しようと、焼く・蒸す・煮るといった調理法と、ニンニク・ショウガ・コショウの味付けによる5段階評価の調査を実施したほか、スティックタイプのスナック開発などを行った。今後は、アンケートデータの再集計やほかの調理方法への取り組み、乾燥剤などを利用した長期保存なども進める。

 

竹園高等学校
「電気を通す布やゴムの開発」

<企画概要>
金属の代替として電気伝導性を有する物質を開発するため、水を溶媒に用いてポリアニリンを合成する際、各種繊維を直接加えることで、導電性のポリアニリン・繊維複合材料の作製を目指す。

<中間報告会>
ポリアニリンを布・ゴムに吸着させた導電性を持った物質の作成と抵抗値の測定を実施。綿・毛・ナイロン・アセテートの4種での抵抗を計測。時間比較と、布の種類によつ比較を行った。15分と120分の染色時間で、ほぼ抵抗値の変化が見られないことから、15分程度で染色が完了している、または酸化状態の変化が起こっていると考察。布ごとの抵抗値には、ポリアニリンの繊維への吸着しやすさが関係している可能性があるという。今後は、測定方法・作成方法の改善や導電性を持たせるための組み合わせを検証していく。
 

つくば工科高等学校
「街中案内及び歩行補助を目的とした屋外自動走行システムの開発、研究」

<企画概要>
歩行サポートを必要とする高齢者や障害のある人などが、快適かつ安全な日常生活を送れるように、市街地を安全に自動走行するロボットを製作する。

<中間報告会>
カメラでの周囲確認、特に信号機の検出を目指し、YOLOv3を用いた物体検出を行った。製作したロボットには、カメラ、ヒートシンク、ドライバボード、Raspberry Pi 4 Model B 03を使用。熱暴走の対策なども講じる。今後は、汎用性を意識し、「市街地を自走走行できる」「案内ガイドとしての運用ができる」「歩道の安定走行」などを実現させるべく、開発・改良をすすめていく。

 

つくば工科高等学校
「多機能型溶解炉開発」

<企画概要>
防災用に使用可能な暖房や調理用ヒーターとして活用するために、ポータブルの多機能型溶解炉を開発する。さらに、金属加工等できるようなイベントを開催し、ものづくりの楽しさを伝えていく。

<中間報告会>
溶解炉の製作や、アルミ缶の溶解、ふた・やっとこ・スラグ取り棒・木枠などの小物を製作し、完成イメージ図を作成。試運転を実施し、アルミが溶ける様子などを動画に収めた。温度は1000度まで上げることができ、アルミ缶を溶かしインゴットを作ることができた一方、通気口からの送風だけだと熱が均等に行き渡らない、コークスは一度温度が下がったら上がりにくいなどの課題が見えた。今後は、学校関係者参加のものづくりイベントで参加者からのフィードバックを集めるほか、アルミ以外の鉄などの金属を溶かせるだけの炉の製法を追求していく。

 

並木中等教育学校
「古文直訳システムの開発」

<企画概要>
古文書のくずし字を画像解析し、現代語訳までの工程を一気にこなすことができるシステムを開発する。

<中間報告会>
kaggle-kuzushiji-recognition-masterなどのインストールおよび検証を実施。
今後は、Kaggleなどについて、学びを深め、日本語歴史コーパス(中納言)の登録が終わり次第制作していく。
史料を簡単に読めるようになるため、歴史に触れる機会が増える可能性もあるほか、現在ほとんど手作業で行われている史料の解析が半自動化されることによる効率化などを目指すという。

 

岩瀬日本大学高等学校
「表現アプリ(案)」

<企画概要>
聴覚や発話が困難な人と聴覚障害者等以外の双方の心を結ぶため、手話で伝えたい内容をAR化し、手話3Dモデルを使うことで、スムーズに会話できる環境を整えるアプリを開発する。

<中間報告会>
東日本大震災で感じた情報とコミュニケーション支援の重要性から、災害時に聴覚障がいを持つ人との意思疎通を図るアプリケーション開発を開始。聴覚障がいの人との会話を通し、理解を深めながら、「たすけてほしい」「トイレに行きたい」などのコミュニケーションボードのレイアウトや内容の作成を進めた。並行して進めるLive2Dモデルと手話の翻訳プログラムの開発では、聴覚障がい等の人が手話表現を行った際の翻訳を目指す。

 

茗溪学園高等学校
「地図のオープンデータを活用しリサイクル拠点の情報共有を行いつくば市でのゼロ・ウェイストの推進を図る」

<企画概要>
つくば市のゼロ・ウェイストを実現するため、市民それぞれの現在位置に近いリサイクル拠点の情報を共有できるウェブ地図を開発し、市民がゴミ削減のための新たな生活スタイルを導入することにより、ゼロ・ウェイストに貢献することを目指す。

<中間報告会>
つくば市のゴミに対する現状を把握するために、つくば市一般廃棄物処理基本計画(2018年)を調査。つくば市内のリサイクル拠点を置くスーパーマーケット等の事業所37店舗で、資源物の種類などの実態調査を行った。そのほか、つくば市環境衛生課へのインタビューを実施。リサイクル資源についてどこで何を回収しているのか市民に共有されている情報がないことや、各事業所独自の社会貢献活動や工夫が市民に共有されていないなどの課題が見つかった。今後、ウェブブラウザで閲覧可能なウェブ地図の制作に加え、資源ゴミ回収の情報なども表示できるよう制作を進め、ウェブ地図の市民活用を目指す。


「IBARAKIドリーム・パス事業」

主催:茨城県教育委員会
運営:株式会社リバネス

 

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