水戸市在住の映画監督・鈴木洋平さんの長編映画企画「ABOKKE」が、10月7日~9日に開催された第24回釜山国際映画祭内の企画マーケット「第21回アジアン・プロジェクト・マーケット(APM)」に選出された。
「第21回アジアン・プロジェクト・マーケット(APM)」会場の様子
鈴木さんは、日立市出身。多摩美術大学で映像制作を学んだ後、2012年に水戸に拠点を移し、インディペンデント映画を製作している。初長編映画「丸」は、バンクーバー国際映画祭新人監督部門にノミネート、ウィーン国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭に正式出品されるほか、「ニュー・ディレクターズ ニュー・フィルムズ」(2015)に選出。昨年、劇場公開された。
同企画は、鈴木さんが以前より関心を持っていた水戸の歴史や文化を調べていくうちに、水戸市木葉下(あぼっけ)町に佐竹氏の時代に開かれた金山があり、かつて金を産出していたという歴史を知ったことがきっかけ。同時に、市内中心地にある洞窟に金色に輝くヒカリモが生息していることから着想。水戸の地底に闇が眠っているというイメージで作り上げた。
APMは、1998年に立ち上げられたアジア最大の映画プロジェクトマーケット。マーケット期間中、資金調達前の映画や企画に対し、出資者や映画関係者とミーティングを持つ機会が与えられ、賞金授与やポスプロ支援などのサポートが提供される。
鈴木さんは「APMに選出されたということは企画としてのお墨付きをもらえたということなので単純にうれしい」と、話す一方で「映画の才能があっても資金集めができないと話にならない。結果、産業としての映画が多様性を失っているのが現在の日本映画」と危惧する。自身のAPM選出については「企画マーケットに参加するのは初めて。アジア全土から700近くの応募作がある中で、僕の映画を選んでくれたということに、多様性を感じる。過去に選出された映画は国際的に成功した作品ばかりなので、襟を正す思い。海外を頼らざるを得ないという状況は少し寂しいが、作りたい映画を作るためには挑戦するしかない」と意気込む。
今作は2019年に撮影開始の予定。ほぼ全てが水戸で撮影される予定。