「サイクルトレインの導入促進に向けた鉄道事業者・市町村等研修会」が10月6日、大洗文化センターで行われた。主催は茨城県公共交通活性化会議。
茨城県ではサイクルツーリズムによる観光振興を推進しており、JR岩瀬駅(桜川市)~JR土浦駅(土浦駅)および霞ヶ浦湖岸道路を合わせた全長約180キロのサイクリングコース「つくば霞ヶ浦りんりんロード」は、2019年11月にナショナルサイクルルートに認定された。
10月3日・4日は、車内に自転車を置くスペースを設けたJR東日本千葉支社のサイクルトレイン「B.B.BASE」が鹿島線で初運転を行った。交通政策課の中村浩課長は「全県でのサイクルツーリズムの展開に加え、『B.B.BASE』の本県初上陸の流れを生かし、さらなるサイクリング環境の向上や誘客の促進に向け、サイクルトレインの導入やサイクルツーリズムの推進に向けた学びの場として企画した」と話す。
当日は、鉄道会社職員、自治体職員ら約70人が参加。先進事例として「伊豆急行」の長縄健吾専務と滋賀県守山市地域振興課の杉本悠太さんが登壇し、「伊豆急行」(静岡県)でのサイクルトレイン導入の背景や企画の経緯、「ビワイチ」(滋賀県)での自転車を活用したPRをはじめとした取り組みなどを話した。
伊豆急行は、JR東日本、東急電鉄と連携し、南伊東~伊豆急行下田間でサイクルトレイン(8000系のみ)を運行している。「(ほかの鉄道事業者と)一緒にサイクルトレインを進めるのは無理なのではないかと思ったが、慎重に進めつつ、あとはやるかやらないか、と導入した」と振り返る。公共交通機関として課題となるバリアフリー化については「サイクリストに関わらず、バリアフリー化については声が上がる。バリアフリーについては割り切って進めた」と話す。現在、MaaS(Mobility as a Service=モビリティ・アズ・ア・サービス、マース)の観点から、人の移動を「ドアtoドア」で、どうデザインするかに着目しているという。
杉本さんは「まずは、ビワイチをホンモノにすることが重要だった」と振り返る。ビワイチを発着地の起点に必要な機能を整備したという事例や、地域の理解を増やす重要性を話した。「自治体はまず、自分たちを知り、よそを知り、成功モデルをどんどん取り入れ、AISAS(アイサス)モデルに落とし設計していく。行政でもマーケティングは大事」とも。
講演後には、意見交換会も開き、具体的なコストや苦労、失敗談、公共交通機関としての課題をどのように割り切ったのか、実際の利用者数、モチベーション維持について話し合った。
県スポーツ推進課の西口智雄課長補佐は「『自転車乗るなら茨城』を目指す。『つくば霞ヶ浦りんりんロード』の確固たるブランドを構築し、この流れを全県に拡大し、『サイクリング王国』を確立していきたい」と意気込む。
中村課長は「全県でのサイクルツーリズムを掲げていても、役所からの押し付けでは何ごとも続かない。今日の講演を通して、先進的な事例を吸収し、自分なりにかみ砕いて実践してもらうことが重要」と話す。「意見交換会では、長縄さんの『割り切り』というキーワードや杉本さんのポイントアドバイスに、機運が高まっているように感じた。今後も各所で連携しながら、勢いづけることができれば」と期待を寄せる。