JR東日本が10月23日、新幹線と常磐線の特急列車を活用した鮮魚の宅配と店頭販売の実証実験を始めた。
実証実験では、その日水揚げされたばかりの鮮魚を大洗漁業協同組合が勝田駅に持ち込み、JR東日本物流が品川駅まで運ぶ。
期間は10月23日~11月20日、火・金曜(11月3日除く)の全8回。勝田(ひたちなか 市)~品川駅間を約1時間30分で結ぶ特急「ときわ」を活用する。JR東日本は、2017(平成29)年から列車での荷物輸送の実証実験を始めていたが、水戸支社の在来線特急列車を使うのは今回が始めて。
水戸支社ではこれまで、地方創生の強化・推進策として、魅力ある食材や地産品を販売する地域PRイベントなどを行ってきた。JR東日本水戸支社広報室担当者は「(JR東日本の)ネットワークを生かし、地域PRにつながれば」と期待を寄せる。
水産物は13時47分勝田駅発の特急ときわ号の車内販売用準備室に積み込み、品川駅まで輸送した後、品川駅構内の鮮魚店「sakana bacca エキュート品川店」で販売する。
実証実験初日のこの日は、大洗漁業協同組合が生シラス約10キロを積み込んだ。輸送鮮魚は旬の時期に合わせ、ハマグリやヒラメなども検討しているという。
勝田駅での平日始発特急列車は14本。新型コロナの影響による移動自粛やイベントの中止などで新幹線や特急の利用客数が低迷するなか、新たな荷物輸送サービスの実現を目指す。
JR東日本水戸支社営業部の蔵冨秀穂部長は「勝田駅は特急の始発駅となり、積み込みの時間が取れることから実証実験の駅とした。鉄道の強みは、速達性と定時性。首都圏のネットワークを生かし、迅速に首都圏のお客さまのもとに商品を届けることができる」と話す。「輸送のニーズが高まるなかで、ドライバー不足の社会課題もある。局地間輸送のお手伝いができれば」とも。
蔵冨部長は「グループ全体の経営ビジョンのキーワードに『変革』を掲げている。今回の実証実験も『変革』の取り組みの一つ。荷物を運ぶという新しいチャレンジの結果を踏まえ、オペレーションや鮮魚だけでなく、今後も鉄道を利用することで付加価値を高められる商品についても検討していく」と話す。