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水戸一中の校内ギャラリーで陶芸展 参加型プロジェクトで「つながり」表現

作品前に立つ現代陶芸作家の塩谷良太さん

作品前に立つ現代陶芸作家の塩谷良太さん

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 水戸市立第一中学校(水戸市東原)の教室棟1階にある「ギャラリーひのたて」で現在、「塩谷良太 つながる『ひとてま』プロジェクト展」が開かれている。

さざ波をイメージして並べられた「ひとてま」

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 「ギャラリーひのたて」は、水戸第一中学校(以下、水戸一中)の資料室を改装し、「地域と学校」「作家と学校」をつなぎ、一般に開放する新しい形のギャラリーとして2018(平成30)年6月に開館した。

 同校美術科主任の春田友則教諭は「公立中学校内に一般開放のギャラリーを作るのは全国で初の試み。先生や地域、作家や教育機関などの理解と協力があってこそ実現できた」と振り返る。同ギャラリーでは、学びの場として水戸一中の美術部の生徒も運営に携わり、年1回、現代美術作家の作品展を行う。

 春田教諭は「子どもたちが現代美術作家の作品制作過程に携わり、間近で見ることができるのは貴重な経験となる。地域の人たちに芸術に触れる場を提供する意味も大きい。来館するリピーターが年々増えている」と話す。「先入観が少ない子どもたちが感想を語り合い、より多くの考えに触れ、学びの広がりになることも期待する」とも。

 塩谷良太さんは、東京と土浦市を中心に活動している陶芸家。2011(平成23)年9月、東日本大震災の影響で一時避難した福島県の住民が避難先を離れる際に、避難先住民と粘土を手に握手をしてもらい、焼成して贈るプロジェクトを行った。以来、握手をする2人の手の間に粘土を挟んでできる形を用いて造形を展開するワークショップとして、イタリアやインドネシアなど国内外でも継続している。

 塩谷さんは「人と人が握手をして生まれる粘土ピースは『つながり』を表している。握手は世界共通の行為。イタリア・インドネシアをはじめ、さまざまな国でも大きな反響があった」と話す。「『ひとてま』は国境や宗教も関係なく、過去と今と未来、そして思いの行方を表すアートであると実感した」とも。

 春田教諭が塩谷さんに依頼し、同展の開催が実現した。春田教諭は「新型コロナウイルス感染症の影響が拡大し、人との接触を避けて心のつながりが薄れつつある今だからこそ、『ひとてま』プロジェクトに新たな意義を見い出した」と話す。

 同展では、来館者が手袋(来館時配布)・アルコール消毒等、感染症対策を行ったうえで、手に粘土を載せ、握手をしてでき上がった粘土のピースを展示作品に並べ加えてもらう。

 作品搬入日の2月20日、水戸一中美術部の生徒たちが作品展示作業に参加。塩谷さんから作品のイメージを熱心に聞き、アートピースを並べる姿が見られた。美術部部長で2年の高井智美さんは「握手の痕跡がアートになるのは今まで見たこともないし、新しい発想に驚いた。この体験が何か今後に生かせたら」と笑顔で話す。

 開館時間は9時~17時(最終入館は16時30分まで)。日曜休館。来館には電話での事前予約が必要(TEL 080‐4782‐4321、会期中のみ)で、発熱(37.5度以上)している人は入館できない。

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