水戸芸術館(水戸市五軒町)で現在、建築家・磯崎新さんの大規模回顧展「磯崎新:群島としての建築」が開催されている。
2022年に逝去した磯崎さんは、国際的な建築家として国内外で活躍し、2019年に建築界のノーベル賞と称されるプリツカー賞を受賞。代表作に、旧大分県立大分図書館(現アートプラザ)、バルセロナオリンピック競技場、茨城県内の同館やつくばセンタービルが挙げられる。
磯崎さんが設計した同館を会場とする同展。主任学芸員の井関悠さんは「建築の展覧会は実作でなく模型が並ぶが、今回は代表作として当館そのものを『展示』している。磯崎建築の中で磯崎さんの建築世界を体験してもらいたい」と話す。来場者には、建築史家の五十嵐太郎さんが監修する「水戸芸術館建築マップ」が配布され、館内の解説と展覧会を合わせて磯崎建築をより深く体験できる。
同展の表題にもある「群島」は、1990年代以降に磯崎さんが立脚した概念で、会場設計を担当した日埜直彦さんは「複数の建築が組み合わさり、一つの場所を作る概念。水戸芸術館も美術館や劇場などがそれぞれ分かれた建築として存在し、都市的な成り立ちをしている」と話す。「この概念から、同館は『都市』や『建築』に限らず、単一の領域にとどまらない磯崎さんの活動を群島の様に構成する」とも同展を紹介する。
展示は同館の模型を展示する第3室を軸に、第1室から第5室までが対称になって都市計画と建築の営みを紹介。第5室と長廊下の第6室で、代表的な建築作品を紹介する。第9室には壁面に磯崎さんの水彩画と年譜を展示。中央には磯崎さんが生前にアトリエで使っていた椅子とテーブルを展示し、来場者は椅子に座って関連書籍を鑑賞することもできる。
関連企画として、同館は会期中の11時(土曜・日曜・祝日のみ)、14時、16時から普段見られない施設を公開する「水戸芸術館見学ツアー」を行う。1月11日は、構造家の金箱温春さんによるトークイベント「だれも知らない構造のはなし」を開催。同館のシンボルである塔の解説を行う。井関さんは「世界的な建築家でありながらまだ回顧展が開かれておらず、磯崎さんが設計した美術館として改めて磯崎さんを紹介する機会が必要だった。今回を機に、彼の代表作である水戸芸術館に足を運んでもらえたら」と来場を呼びかける。
開催時間は10時~18時。月曜休館(祝日の場合翌日休館)。入場料は、一般=900円、高校生以下・70歳以上無料。1月25日まで。