水戸駅前壁画アートプロジェクト「M-ART」の完成披露パーティーが5月17日、水戸のM-WORKで開かれた。
水戸市中心市街地の活性化を目指す「水戸ど真ん中再生プロジェクト」の第7弾で、市内で現代アート専門ギャラリー「ARTS ISOZAKI」の経営や水戸市の活性化活動を行う磯崎寛也さんが中心となり取り仕切った。水戸駅北口にあるビル解体後の残骸の壁にストリートアーティストが壁画を描くというもので、制作は、KAMIさんとSASUさんによる制作ユニット「HITOTZUKI(ヒトツキ)」が担当した。
完成した壁画は縦約8メートル、横約55メートル。4月29日から制作を始め、5月13日に完成した。テーマは「LUCK」。徳川光圀の「苦は楽の種、楽は苦の種と知るべし」という言葉から「楽」「苦」=「LUCK」と発想を得たという。
パーティーには大井川和彦県知事や高橋靖市長も駆け付け、大井川知事は「壁画で駅前の表情が豊かになった。空洞化を心配する方もいたと思うが、地域が活性化するきっかけになるのではないか」と期待を寄せた。
当日は、トークセッションも同時開催。水戸芸術館現代美術センターで勤務していた窪田研二さんをモデレーターに、KAMIさんとSASUさん、水戸出身のヒップホップユニットLUNCH TIME SPEAXの元MC・GOCCIさんが登壇。ストリートアートを紹介した日本初の大規模な展覧会「X-color/グラフィティinJapan」(水戸芸術館現代美術センター)での出会いや壁画制作までのきっかけ、制作の苦労まで幅広い内容が語られた。
SASUさんは「期限があり、予算も分からず現場での足場などの安全性といった不安要素の中、打ち合わせの中で見た壁が訴え掛けてきたことと『最終的には自分が責任を持つ』という磯崎さんの言葉に心を決めた」と話し、KAMIさんは「最初に壁を見てイメージしたのはマチュピチュのような神殿。このような特殊な現場での制作は初めてだったが楽しんでできた。この壁画ができたことで『苦』を『楽』にする強さや、アイデアなどができればいい」と話した。
SASUさんは「まずは私たちがこれまでへの感謝を忘れず、楽しんでいる姿を見せることが大事だと思った。自分たちの小さいところからでいい。楽しんでいると見えることで、2つ3つ、1000と広がっていくはず」と笑顔を見せた。
来場した市内の高校に通う磯崎偲遊(しゅう)さんは「高校生の中でも茨城のまちは灰色をしているイメージがあった。今回の壁画には存在感を感じた。友人たちの間でも『自分も見に行った』という声も多い」と話す。
壁画は来春まで展示される予定。同プロジェクトと連動したヒトツキの個展(ARTS ISOZAKI)は6月30日まで。