水戸の吉久保酒造(水戸市本町)が手掛ける2019年の新酒「初しぼり」の出荷が12月2日、始まった。
吉久保酒造は1790年創業。米問屋を営んでいた初代・吉久保清三郎が、豊富な米と徳川光國によって整備された笠原水道の源水を使って酒造りを始め、来年で創業230年を迎える。
「初しぼり」は秋に収穫された米を初めて仕込み、搾った日本酒のことで、「火入れ」という加熱処理をしていないことから、酵母や酵素が生きている生酒。
12代目社長の吉久保博之さんは「今年は良い米が収穫できたので、うま味がしっかりとしたコクがある『初しぼり』になった。荒く搾ってあるので酵母や酵素が瓶の中で生きて炭酸ガスを発している。ジュワッとした飲み口が特徴。濃厚な味の料理との相性がいい。あんこう鍋などがお勧め。日本酒のヌーボーである『初しぼり』はこの時期限定なので、毎年楽しみにしているファンも多い」と話す。
酒造りの最高責任者に当たる杜氏(とうじ)はピーク時に比べ、全国での人数が2割弱まで減少。酒造技術継承問題が深刻化している。県と茨城県酒造組合は、人材育成と茨城の日本酒のブランドの向上を目的として今年新たに『常陸杜氏』認証制度を創設。同社の杜氏・鈴木忠幸さんが11月、第1号の『常陸杜氏』として認証された。鈴木さんは、ひたちなか市出身。18歳で入社し、26年目の44歳。
吉久保さんは「自社の若い杜氏と若い蔵人で、伝統を守るだけではない新しいニーズに応えるため、新しい技術、方法を取り入れて、時代に合ったものも造り、退化するのではなく前進していきたい。茨城に来たら、おいしいお酒とおいしい食べ物と、茨城が育んできた味を楽しんでもらいたいので積極的にPRもしていく必要がある」と意気込む。
2020年には、水戸産の山田錦で造る純米大吟醸記念酒と、230周年ラベルの「一品」ワンカップの販売を予定する。
「初しぼり」は、720ミリリットル=950円、1800ミリリットル=1900円。