干し芋生産の過程で生じるサツマイモの皮を利用した天然甘味食材「ほしいもピール」の販売が2月3日、小売店などで始まった。
「ほしいもピール(フレーク)」(左)と「ほしいもピール(パウダー)」(右)(永井農芸センター提供)
同商品を開発したのは、明治末期からひたちなか市で干し芋を生産する「永井農芸センター」(ひたちなか市長砂)。これまで廃棄されていたサツマイモの皮部分を原材料とした天然甘味食材である同商品は、カリカリとした食感が特徴の「ほしいもピール(フレーク)」と、それを粉砕して粉状にした「ほしいもピール(パウダー)」の2つがあり、後者を材料に用いるパウンドケーキやクッキーと共に1月下旬、同センターの直売所とオンライショップで販売開始。今後は、水戸市公設市場からの出荷を通じて小売店の店頭でも販売していくという。
開発の経緯について、同園代表の永井桂一さんは「長年、サツマイモの皮の処理・処分は業界や地域の課題だった。茨城県全体で見ても年間約1万トンの皮が生じるともいわれていて、SDGsの観点からも問題を感じていた」と話す。同園は、2001(平成13)年に干し芋の原料としては規格外になるサツマイモを活用したタルトケーキを開発するなど、以前から環境負荷の低減に取り組んできた。
今回、マーケティング事業を行うやまと企画(東京都大田区)が皮の活用について提案を持ちかけたという。同社社長の鈴木雄一さんは「そもそも日本人の食経験として、サツマイモの皮を食べることは違和感がない。農家の負担がかからない形でどうにか活用ができないかと考えた」と話す。両者共同で「ほしいもピールプロジェクト」を立ち上げ、2年ほど前から開発を進めてきた。
「歴史ある干し芋産業の将来を考えると、地域の課題や環境問題を少しでも残さず、持続的に次の世代へと引き継いでいきたい」と地域産業への思いを語る永井さん。プロジェクトと銘打つことで地域の巻き込みを狙い、「地域の課題に良い解決法が見つかったから、みんなに広げていきたい」と、実際に試作段階から同業者に声をかけ、同商品の生産プロセスや技術をオープンにしてきたという。
同商品の原材料はサツマイモのみ。糖度50パーセント相当とされ、「サツマイモの栄養素を濃縮することで生食に比べ約5倍の食物繊維を含有する」という。鈴木さんは「フレークはそのまま食べられ、干し芋と焼き芋の間のような味わい。シーザーサラダやなどのクルトンの代わりとしてもお薦め。パウダーは、お菓子の材料として、砂糖を控えめにしてこれを加えてもらえれば、甘さがありつつ、サツマイモ特有の風味を押し出せる食材」と活用方法について説明。パウダーを材料にしたパウンドケーキやクッキー、スコーンなども販売している。
「まずは『ほしいもピール』を知って食べてほしい」と永井さん。「おいしさを実感してもらい、将来のためにも『これを今まで捨てていたのか』と感じ取ってもらえれば」と呼びかける。