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茨城大そばの定食店「ぽんぽこりん」閉店へ 消える「おふくろの味」惜しむ声続々

厨房(ちゅうぼう)に立ち笑顔を見せる小林美智子さん

厨房(ちゅうぼう)に立ち笑顔を見せる小林美智子さん

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 茨城大学そばの定食店「ぽんぽこりん」(水戸市堀町)が4月26日に閉店する。

ぽんぽこりんの閉店を知らせる掲示

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 同店は2010年、小林直美さんと母・美智子さんが創業。肉と魚、2種類の日替わり定食を提供し、茨城大学の学生を中心に親しまれてきた。小林さん親子が育てた野菜と毎日市場で仕入れる魚を使った料理、家庭的な肉料理と退店時の「行ってらっしゃい」という声掛けが特徴。

 店名の「ぽんぽこりん」は「最初にこの店舗に決めた時、店内にタヌキの置物があったことと娘の直美がタヌキのイメージだったことから決めた」という。

 美智子さんは「私も72歳。足腰を痛めて体が弱ってきたこともあり無理が利かなくなってきた。平成が終わるこのタイミングで店を閉めることに決めた」と経緯を話す。4月上旬に店舗に告示したところ、口コミで閉店を知り茨城大学生やかつてのアルバイト生、社会人が多く訪れているという。

 美智子さんは「厨房に立ちながら世間話や就活の話、家族の話、悩みを聞くこともあった。ここに来るお客さんは魚や野菜を求めて来る学生が多い。『今度は何が食べたい?』と、リクエストでメニューを決めることも多かった。閉店までのメニューもリクエストに応えてハンバーグ、お煮しめ、ビーフシチューなどが決まっている」とほほ笑む。来店客の「このお店はハンバーグも唐揚げも大ぶりでおいしい」という声に「満足して帰ってほしいからね」と笑顔で返す様子も見られた。

 店内の障子部分には、茨城大学の卒業生たちから寄せられた10年分の色紙や似顔絵が飾られている。「ぽんぽこりんは水戸の母」「言葉にできないほどのおいしいご飯とあたたかい愛情をありがとう」(原文ママ)といった、客と小林さん親子の関係性を感じるメッセージが多く記されているほか、閉店を知ってからの客が書き込む「落書き帳」も用意され、多くのコメントが記されている。

 茨城大学4年の小松崎流緋(りゅうび)さんは「あんこう料理があることと、500~600円という価格で食べられる定食屋があると聞いたのがきっかけでこの店を知った。今日は閉店すると聞いて、大学にも用事があったことから行ける時に行こうと思い来店した」と話し「今日はカツオの唐揚げ定食を食べて、ご飯もお代わりした。この辺りは定食屋よりラーメン屋が多いので閉店は寂しい」とも。

 常連だという茨城大学院1年の林雄樹さんは「閉店を聞いた時はショックだった。1、2年生のころはラーメン屋ばかりだったが4年生になって授業が減り、自由な時間ができたことでよく足を運ぶようになった。野菜や魚を食べたいと思うようになったのも理由の1つ」と話す。「最初に来たのは大学1年生の5月ころ。定食屋でカウンターを挟んでお店の話せるというのがイメージに合っていた。料理はまさに『おふくろの味』。温かみがあって、実家のおばあちゃんを思い出す。世間話から家族の話、旬の食材の話までできるこんなお店はなかなかなかった。『行ってらっしゃい』と送り出される場所がなくなってしまうなんて」と寂しさをにじませる。

 美智子さんは「約10年、本当に楽しかった。みんな子どもや孫のよう。配偶者や子どもを連れて来る人たちもいて、うれしかった。若い人たちにたくさんパワーをもらった」と振り返る。「開店時から『行ってらっしゃい』と送り出し、『お帰り』と迎え入れてきた。それはずっと変わらない」と笑顔を見せる。

 閉店後はラーメンチェーンの倉庫として改修される予定だという。

 営業時間は11時30分~14時。土曜・日曜定休。

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