店主の佐藤穂奈美さんは大洗町出身。首都圏でまちづくりの仕事を経験した後、地元にUターンして2021年4月に同店をオープンした。コンセプトを「本を通じて人と地域を知る」とし、ブックカフェとしての営業に加え、読書会やイベントも開催してきた。2022年には不動産業やリノベーション事業を軸に「Coelacanth(シーラカンス)」を起業。同社スタッフが店頭に立つ日もあり、同店は移住や不動産、リノベーションなどの相談窓口としても機能する。さらに2026年から、書籍や家具などを対象とした古物商「道具と◯(エン)」を始め、店先には古家具や食器が並ぶ。
佐藤さんは店で販売する本について、「大型書店ではなかなか出会えないような本を、独立出版社に直接連絡して仕入れることが多い。自分が読んで面白かった本や、著者や出版社の人と良いご縁があって並べる本もある」と話す。棚ごとにテーマを設けて、気軽に読める短歌集や、自身の仕事や研究領域につながる建築、文化人類学系の書籍が並び、ドリンクを注文すれば、店内席で読書をすることもできる。
「地域や人を知れば知るほど大洗が好きになっている」と佐藤さん。「地域は『つながり』という言葉では表現しきれないほど深いクモの巣のようにつながっていて、ゆるやかに助け合って物事を解決していくこの地域のチーム感は、Uターン前に想像していた以上だった」とも。オープンから5年間を振り返り、「店のコンセプトはお客さまに向けたメッセージだったはずなのに、店や本を通じて人と地域を知っていったのは私自身だった。このコンセプトは間違っていなかったと確信している」と話す。
オープン以来、同店にはブックカフェとしての利用客だけでなく、移住前の下見や散歩途中の寄り道など、さまざまな理由で人が集まる場となっている。佐藤さんは「目的が明確になっていく世界の中で、余白的な空間、曖昧な場所であり続けたい。自分が予想もしない日常にふと出合いたくなったら来てほしい」と来店を呼びかける。