造形作家の伊藤公象さんが現在、集大成となる作品集制作に向け、準備を進めている。
伊藤さんは石川県出身。土を素材とする立体造形、彫刻、版画などを制作し、1978(昭和53)年にインド・トリエンナーレ国際美術展でゴールドメダルを受賞したほか、1984(昭和59)年にヴェネチア・ビエンナーレの日本代表として参加した。
全国各地の美術館での展示、茨城県水戸合同庁舎、茨城県市町村会館などの陶壁制作、アートイベントの主催、メディア出演、著書出版と活動は多岐にわたる。
現在89歳の伊藤さん。1972(昭和47)年から、笠間市の「伊藤アトリエ」を拠点に、創作活動を続けている。
作品集の制作は、水戸にギャラリー「ARTS ISOZAKI」(水戸市三の丸)を構える磯崎寛也らが中心となって構成する「伊藤公象作品集制作プロジェクト」が行う。
磯崎さんは「オープンから3年が経過し、ARTS ISOZAKIは、多くの市民や全国の現代アート愛好家の方々に親しんでいただけるギャラリーとなった。私たちの活動を温かく見守り、支えてくださったアーティストに恩返しをするために、作品を後世に残す活動をしようと、まずは茨城で活動する世界的アーティスト伊藤公象先生の作品集を手掛けることにした」と話す。
ディレクションは茨城大学の小泉晋弥名誉教授が担当する。半世紀に及ぶ伊藤公象さんの作品を新たな視点で捉えなおす作品集を目指すという。
作品集はクラウドファンディングのリターンで受け取れる。4月2日現在、279%の558万円を達成しているが、ネクストゴールとして800万円を掲げており、9月に予定している伊藤さんの個展制作費(約200万円)、水戸の小中学校、茨城県内の高校、全国・アジアの美術館、美術大学や美術館に作品集を寄贈する費用に充てるという。
磯崎さんは「この作品集によって、伊藤公象の創造活動を後世に残すことができることは私たちにとって至上の喜び」と話し「岡倉天心や九鬼周造らにならい、『華厳経などの東洋思想によって近代美術史を拡張する』をコンセプトに、これまでの伊藤先生のインスタレーションを場所や時間によって変化し続けてきた有機的な『流れ』として受け止められるものにしたい」と意気込む。
伊藤さんが提示する「アーティストを市民が応援し、育み、そこから生まれたアートが街を豊かにする。そのためには芸術を学ぶ学校が必要」という考えに共感したという磯崎さん。「伊藤先生の作品集の寄贈をすることで、茨城県の芸術教育に少しでも貢献し、いつかこの地域にこの地域でしか実現できない芸術の学校を作りたい」と話す。
クラウドファンディングの締め切りは4月30日23時。