現代美術家の竹村京さんの個展「竹村京 うごくせかい」が現在、水戸芸術館現代美術ギャラリー(水戸市五軒町)で開かれている。
竹村さんは1975(昭和50)年生まれ、東京都出身。ベルリンでの活動を経て、現在は群馬県高崎市を拠点とする。「縫う」ことを軸に作品を国内外で発表している。
同展は竹村さんにとって過去最大規模の個展。担当した同館学芸員の後藤桜子さんは「竹村さんはこれまでも作品発表の機会を持ってきたが、グループ展が多く、作家性が断片的にしか紹介されてこなかったと感じる。複数の作品を通して、彼女が制作でやろうとしていることを包括的に紹介できれば」と話す。
制作を貫くのは「修復」というコンセプト。会場には、壊れたものを薄い布に包み、絹糸で縫って「修復」した作品を数多く展示する。竹村さんは「修復」という言葉を「壊れた物を元通りにする『修理』とは少し違い、何が起こったのかを見える状態にとどめること」と説明する。「壊れたものを見て、どうしようもないけれど、諦めがつかないからとりあえず集めておくという気持ちで始まった」とも。
作品の一部には、蚕とオワンクラゲやピンクサンゴを交配してつくった絹糸「蛍光シルク」を使い、照明を落とした展示室内で絹糸が光る様子を見ることができる。竹村さんは「これまで縫うことを『光を与える』と表現してきたが、本当に光る作品になった」と話す。
新作「修復されたN半島の屋根瓦」では、能登半島地震で壊れた黒瓦を「蛍光シルク」で修復して展示する。修復した16枚のほか、展示室内には家2軒分の瓦の山を置く。「人ひとりの力は小さく、瓦は重くてまるで頭蓋骨のようだと感じた」と竹村さん。後藤さんは「彼女が扱えるのは全体のごく一部だが、その背後には無数のものがあるという意識がある」と作品の背景を話す。
同館は3月から7月にかけて、市民が大切な物を持ち寄って修復するワークショップを重ねた。修復した家具や日用品は、同ギャラリー第9室で作品として展示する。竹村さんは「自分の制作は記憶を扱うことでもある。この土地に住んでいた人が懐かしく感じたり、展覧会が人をつなぐきっかけになったりすれば」と来場を呼びかける。
開館時間は10時~18時(入場は17時30分まで)。月曜休館(9月21日、10月12日は開館)。10月12日まで。入場料は、一般=900円、高校生以下・70歳以上無料。