リリース発行企業:国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 那珂フュージョン科学技術研究所

真空容器セクターモジュール6基目の据付の様子(写真:ITER機構提供)
南フランスのサン・ポール・レ・デュランスでは、将来のクリーンで持続可能なエネルギー源として期待されるフュージョンエネルギーの実現に向けて、日本、欧州連合(EU)、米国、中国、韓国、インド、ロシアの7極(世界30ヶ国以上)が協力し、世界最大の核融合実験炉ITER(イーター)の建設が進められています。
※ ITER計画 については ITER日本国内機関Webサイト をご参照ください。
ITERはトカマクと呼ばれる世界最大の実験装置で、その中心にある真空容器は、40°の巨大なセクターモジュール9基を精密に組み合わせることで完成します。
※以下の記事は、ITER機構 Newsline を翻訳(一部編集)したものです。
2026年7月28日、6基目の真空容器セクターモジュールの据付が完了
約30時間に及ぶ今回の大規模な吊り上げ作業には100人を超える関係者が参加し、トカマクセクターモジュール#1(トカマクピットへ搬入される9基のうち6基目)は、7月28日、安全に据え付けられました。
今回の吊り上げ作業は、ITERの組立における二つの重要な節目となりました。
プラズマチャンバー全体の3分の2の組立が完了するとともに、韓国が製作した最後の真空容器セクターの据付も完了しました。
今回の作業を統括した
主任建設マネージャー
マチュー・ドゥメイエール氏「セクターモジュールの準備開始からトカマクピットへの搬送完了まで、すべての工程は綿密に計画され、着実に実行されました。このプロセスに携わった多くのチームの努力のおかげで、重要なマイルストーンを達成することができました。」

ITER機構 主任建設マネージャー、マチュー・ドゥメイエール氏(写真:ITER機構提供)
ITERのセクターモジュールの吊り上げ作業は、クレーンオペレーターや測量担当者、安全管理担当者、エンジニアなどが4交代で連携しながら、24時間体制で安全かつ正確に進められています。その中でも「管制デスク」は、約1,400トンのセクターモジュールが吊り上げられる瞬間や、据え付け直前の重要な工程で、機器の動きや変形をリアルタイムで監視する重要な役割を担っています。

セクターモジュールの吊り上げ作業における管制デスクは、アポロ計画におけるヒューストン管制センターのような存在です。写真は、セクターモジュールが据付位置へ近づく中、ポートセル内の管制デスクでセンサーデータの流れを監視するアレッサンドロ・ヴァッカーロ氏(左手前)とジョルディ・ウッチェス氏(中央)。(写真:ITER機構提供)
管制デスクでは、数十種類のセンサーから得られるデータを、これまでの吊り上げ実績やコンピューター解析による予測値と比較しながら監視しています。想定外の動きが確認された場合は作業を中断して原因を分析・補正し、安全を確認した上で作業を再開することで、高精度かつ安全な据え付けを実現しています。

ITER協力企業Arial Industriesの機械エンジニア、ジョルディ・ウッチェス氏(写真:ITER機構提供)
6基全てのセクターモジュール据付を担当/管制デスク
ジョルディ・ウッチェス氏「セクターモジュールの吊り上げ作業で起きている最も重要なことの多くは、目で見ることができません。だからこそ、吊り上げのそれぞれの局面で最も重要な数値に集中しなければならないのです。常に誰かが、その数値を監視していなければなりません。」

左: TFコイル2基を支持するロッドの1本。各ロッドには8枚のひずみゲージが貼り付けられ、その上から黒色の樹脂で覆われています。右: ひずみゲージから取得されたリアルタイムデータが、管制デスクのダッシュボードに表示されています。(写真:ITER機構提供)
管制デスクでは、ひずみや荷重、位置、傾きなどを測定する数十種類のセンサーからデータを取得しています。センサーは1秒間に10回データを記録し、吊り上げ作業中には数百万件ものデータが生成されます。高精度な計測機器により、わずかな変化も捉えながら、安全な作業を支えています。
こうした膨大なデータを専用ソフトウェアで管理・解析しているのが、ITER機構の組立エンジニア、アレッサンドロ・ヴァッカーロ氏です。グラフィックデザインと情報技術の経験を生かして開発した専用ダッシュボードを活用し、リアルタイムで状況を把握することで、安全で確実な吊り上げ作業を支えています。

ITER協力企業Arial Industriesの機械エンジニア、アレッサンドロ・ヴァッカーロ氏(写真:ITER機構提供)
ITER機構の組立エンジニア
アレッサンドロ・ヴァッカーロ氏「私たちは、データを分かりやすくしました。ダッシュボードは、単に情報を表示するだけのものではありません。オペレーターが瞬時に理解できる形で、必要な情報を表示しなければならないのです。私たちは、データの量を増やすことよりも、データの質を高めることの方が有効であることを学びました。」
管制デスクのチームは、吊り上げ作業に先立ち、5月からセンサーの設置や基準データの取得、予測データやチェックリストの作成など、入念な準備を進めてきました。
吊り上げ当日は、組立ホールからトカマクピットへの搬送に合わせて管制デスクも移設し、セクターモジュールの荷重分布や機器同士の接触の有無をリアルタイムで監視することで、安全な据え付けを支えました。
今回、セクターモジュール#1の据え付け完了により、
すでにトカマクピットへ据付完了している5基(#4、#5、#6、#7、#8)に加えて、
トカマクピット内のセクターモジュールは計6基となりました。
年内に7基目のセクターモジュールを据え付ける予定であり、ITER組立は着実に前進しています。

約30時間に及ぶ作業を経て、セクターモジュールは7月28日(火)の午後、所定の位置への据付に成功しました。(写真:ITER機構提供)

6基目のセクターモジュールの据付が完了したことで、プラズマチャンバー全体の3分の2の組立が完了しました。(写真:ITER機構提供)
【引用元】
ITER機構サイト ITER NEWSLINE|Sector Module Lift Millions of data points, one successful lift
https://www.iter.org/node/20687/millions-data-points-one-successful-lift
(29 Jul 2026)
ITER NEWSLINE 日本語訳|6つ目の真空容器セクターモジュールの据付が完了
https://www.fusion.qst.go.jp/ITER/io/iter_newsline_ja_017.html
ITER機構プレスリリース「TWO-THIRDS OF ITER TOKAMAK CORE NOW IN PLACE(ITERトカマク炉心の3分の2が設置完了)」(29 Jul 2026)はこちらからご覧ください。
https://www.iter.org/sites/default/files/media/2026-07/2026-07_pr_two-thirds-of-tokamak-core-in-place_0.pdf

そもそも、ITERもフュージョンエネルギーも良く分からない…、そんな方におススメのコンテンツがこちら! ITER計画やフュージョンエネルギーを楽しく学べる紹介マンガシリーズを公開しています。
ITERマンガを読む(8巻全巻無料)

作業は7月27日(月)の早朝、組立ホールで行われた作業前ブリーフィングから始まりました。(写真:ITER機構提供)
セクターモジュールが、セクターサブアセンブリツールから姿を現した7月27日午後の様子です。モジュールの中心となる真空容器セクターは、2026年2月にこのツールへ搬入され、トロイダル磁場(TF)コイルやサーマルシールドなどを取り付けて、セクターモジュールへと組み立てられました。(写真:ITER機構提供)

サブアセンブリツールを離れ、組立ホールとトカマクピットを隔てる壁を越えるための方向転換を行うセクターモジュール#1。クレーンに吊り上げられたモジュールと専用吊り具の総重量は、1,400トン近くに達します。(写真:ITER機構提供)
セクターモジュール#1をトカマクピットへ降下させる前、交代するシフトのメンバーが作業内容の説明を受けています。7月27日から28日にかけて行われた今回の吊り上げ作業には、100人を超えるITER職員や協力会社のスタッフが参加しました。(写真:ITER機構提供)

ITERのセクターモジュール組立プロジェクトリーダー、ニコラ・サペ氏は、参加したセクターモジュールの吊り上げ作業ごとに、ヘルメットへ記念ステッカーを貼っています。これから、セクターモジュール#1(2026年7月27~28日)の「SM1」ステッカーが新たに加わります。(写真:ITER機構提供)
セクターモジュールがトカマクピットへ移動する際、その位置を確認するために測量機器(メトロロジー機器)が使用されます。写真は、ポートセル内で測量機器を設置している様子です。(写真:ITER機構提供)

トカマクのセクターモジュール#1がトカマクピットへ近づいています。このモジュールは、すでに据え付けられている5基の向かい側に設置されるため、外側(アウトボード側)を先頭にした「後ろ向き」の姿勢で壁の上を通過しています。(写真:ITER機構提供)
セクターモジュールの降下作業は、トカマクのポートセル内に設置された管制デスクから監視されます。(写真:ITER機構提供)